こんにちは、一般社団法人よもぎハーバル協会代表理事の鈴川純子です。今日は「初心者向けの漢方入門ガイド」という題目でお話をします。以前にも陰陽五行をテーマにブログを書きましたが、今日はより日常で活用しやすい内容です。


 

①漢方とは何か?

漢方(かんぽう)は、古代中国に起源を持つ伝統的な医学で、日本においても独自に発展し、現代の健康管理や治療に広く利用されています。漢方の基本的な考え方は、身体全体のバランスを整えることで健康を維持し、病気を治すというものです。漢方は、症状そのものに対処するのではなく、身体全体の調和を大切にし、根本的な体質改善を目指します。

西洋医学が病気の特定の原因や部位に焦点を当て、症状を抑えることを重視するのに対して、漢方は「体全体の調和」「未病を防ぐ」といった全人的なアプローチを取ります。このため、漢方薬は症状が出る前の予防にも利用されることが多く、慢性的な体調不良やストレス管理にも効果的です。

 

②漢方の基本的な概念

漢方の考え方には、いくつかの基本的な概念があります。ここでは、最も重要なものを紹介します。

陰陽(いんよう):すべての物事は、陰と陽という相反する要素から成り立っていると考えられています。陰は冷たさ、暗さ、静けさを表し、陽は温かさ、明るさ、動きを表します。この陰陽のバランスが崩れると、身体に不調が生じるとされます。たとえば、冷え性は陰が強くなりすぎた状態、逆にほてりや炎症は陽が強すぎる状態です。

五行(ごぎょう):自然界や人体のすべては、木、火、土、金、水の五つの要素に分類され、それぞれが互いに影響し合うとされています。五行は、臓器や感情とも対応しており、たとえば肝は「木」、心臓は「火」に関連付けられています。これにより、漢方医はどの臓器が不調を来しているかを診断し、そのバランスを整える薬を選びます。

気・血・水(き・けつ・すい):漢方では、人体には「気」「血」「水」という三つの基本的な物質があり、それらが適切に循環していることが健康の鍵とされています。「気」は生命エネルギー、「血」は血液や栄養、「水」は体液を指し、これらの流れが滞ると病気や不調が生じると考えられます。

 

③漢方薬の種類と使い方

漢方薬は、自然界から得られる植物、鉱物、動物などを原料とした複数の生薬(しょうやく)を組み合わせたもので、その組み合わせが体質や症状に合わせて処方されます。以下に、一般的に使われる漢方薬の例をいくつか紹介します。

葛根湯(かっこんとう):風邪の初期症状に使われることが多い漢方薬で、体を温め、発汗を促す効果があります。風邪の引き始めで、寒気や肩こりを感じるときに効果的です。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう):疲れやすく、体力が低下していると感じるときに使われます。消化器系の働きを整え、元気を取り戻す効果があります。
加味逍遙散(かみしょうようさん):ストレスや更年期障害に伴う不安感やイライラを鎮める効果があり、特に女性に人気があります。ホルモンバランスを整える働きが期待されています。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):血の巡りを良くし、生理不順や冷え性、頭痛などに効果があるとされています。血行不良に伴う様々な症状に使われます。

漢方薬は、一般的に即効性が期待できるものではなく、「温める」「整える」が基本となっており、長期間にわたって体質改善を目的に使用されます。したがって、漢方薬を服用する際は、自分の体質や症状に合ったものを選び、医師や漢方専門の薬剤師に相談することが重要です。

 

④自分の体質を知ることの重要性

漢方では、個々の体質に基づいて薬が選ばれます。自分の体質を知ることが、効果的な漢方治療の鍵です。漢方においては、体質は「虚(きょ)」と「実(じつ)」「寒(かん)」と「熱(ねつ)」といった区分で分類されることが多いです。

虚実(きょじつ):虚はエネルギーや抵抗力が不足している状態、実はエネルギーが過剰な状態を指します。虚の人は体が弱く疲れやすい傾向があり、実の人は体力があり、逆に過剰な症状(例えば炎症や痛み)を訴えることが多いです。
寒熱(かんねつ):寒の体質の人は冷え性で、寒さに弱い傾向があります。一方、熱の体質の人は暑がりで、炎症やほてりなどの症状が出やすいです。
体質診断は、漢方医や専門の薬剤師が脈診や舌診、問診を通じて行います。自分の体質を知ることで、より効果的な漢方薬を選ぶことができるでしょう。

 

⑤漢方薬の選び方と購入時の注意点

漢方薬は、病院や漢方専門薬局、そして市販薬としても購入できますが、自分で選んだ漢方薬が体質に合わないと、逆効果になることもありますので、漢方医や漢方薬局の薬剤師など専門家に相談し、自分の体質や症状に合った漢方薬を処方してもらうのが最も確実な方法です。特に、持病がある場合や妊娠中の方は、自己判断で漢方薬を使用せず、必ず専門家の指導を仰ぎましょう。

 

⑥日常生活への漢方の取り入れ方

漢方は薬としてだけでなく、日常生活にも取り入れることができます。食生活や生活習慣の中に漢方の知恵を取り入れることで、健康維持や病気予防が期待できます。

食養生(しょくようじょう):漢方では「医食同源」という言葉があり、食事が健康の基本とされています。体を温める食材(生姜、ねぎ、ニンニクなど)を積極的に摂ることで、体調を整えることができます。また、季節に合わせた食事を心がけ、旬の食材を使ったバランスの良い食事を意識しましょう。
生活リズムを整える:漢方では、生活習慣も健康に大きく影響すると考えられています。特に重要なのが、規則正しい生活リズムです。日々の習慣を整えることで、気・血・水の流れを良くし、体全体のバランスを保つことができます。

十分な睡眠:夜は体を休め、昼間の活動に備える時間です。漢方では、夜更かしや不規則な睡眠が「陰陽のバランス」を崩し、体に負担をかけると考えられています。特に夜の10時から2時までの間は、身体が最も回復する時間帯とされているため、この時間帯にはしっかりと休息を取るようにしましょう。


適度な運動:体を動かすことは「気」の巡りを良くし、血液の流れを促進します。激しい運動をしなくても、毎日軽いストレッチやウォーキングを取り入れるだけで、体内のエネルギーの流れが改善されます。漢方の考え方では、停滞した「気」が病気や不調を引き起こすため、日々の生活の中で少しでも体を動かすことが大切です。


心のケア:漢方では、心と体は密接に関係しているとされ、ストレスや感情の乱れが体調不良につながると考えられています。日々の生活で自分の心のケアを忘れずに行い、ストレスをため込まないようにしましょう。リラクゼーション方法としては、瞑想、深呼吸、趣味の時間を持つなど、自分に合った方法で心をリフレッシュさせることが大切です。

 

⑦漢方と現代医学の関係

漢方と現代医学は、それぞれ異なるアプローチで病気の治療や健康の維持を目指していますが、補完的に利用することでより効果的な治療が期待できます。例えば、西洋医学での急性期治療中に漢方薬を併用することで、副作用を和らげたり、体力を補ったりすることが可能です。

現代医学は、急性の病気や外科的な処置に強みがありますが、漢方は慢性的な不調や体質改善、予防医療に効果を発揮します。両者の良いところを組み合わせることで、患者の体調や病気に合わせた最適な治療が実現できるでしょう。

ただし、漢方薬と西洋薬の併用には相互作用によって思わぬ副作用が生じることもあるため、必ず医師や薬剤師に相談し、適切な指導を受けることが重要です。

 

まとめ

漢方は、古代から現代に至るまで多くの人々に愛用されている伝統的な医療体系です。その基本的な考え方は、身体全体のバランスを整え、根本的な健康を目指すことにあります。自分の体質を知り、適切な漢方薬を選ぶことで、慢性的な不調の改善や日常の健康管理に役立てることができるでしょう。

また、漢方の知恵は薬だけでなく、日々の生活習慣や食事にも活かすことができます。食養生や規則正しい生活リズムを意識し、心と体のバランスを保つことで、より健康的で充実した日々を過ごすことが可能です。

漢方の世界は非常に奥深く、専門的な知識も必要ですが、まずは自分の体質や生活に合った小さなステップから取り入れてみることをお勧めします。 

 

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